目くじらを立てるとは?

 今でこそ欧米で捕鯨をする国は少ないが、江戸時代までは世界中で捕鯨業は行われていた。 鯨肉は食用、鯨油も食用に使えて石鹸や化粧品にも出来、鯨鬚や鯨骨は加工品に使えるなど、 鯨の部位には無駄が無く、非常に重宝された。 1853年に浦賀へペリーが来航した際も、捕鯨業での補給が目的だったことはあまりにも有名である。

 しかし乱獲によって鯨の数が減少したため、 反捕鯨団体が各国に捕鯨をやめるよう働きかけた。 これらデモの時、抗議の横断幕や看板といっしょに鯨の犠牲を意味するため、 鯨のヒレや尾、骨といった体の一部も掲げられた。 特に鯨の目は“にらみを利かす”という意味で、ポールに立てて抗議デモの先頭にあった。 鯨の目玉で大きいものは1kgほどもあり、“目鯨を立てる”ことは怒りの意を表すには十分であった。
 やがて世界中で捕鯨業は減少し、調査捕鯨が細々と行われるに至る。

 怒りを表す慣用句の『目くじらを立てる』が、ここに由来するのは言うまでも無い。 今でも抗議デモでサッカーボールやバレーボールなどの球状の物を掲げる人がいるのは、 鯨の目玉の名残である。


民明書房刊『クジラ対メクジラ』より
初版発行2006年3月11日


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